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セッションI(1月4日10:00−12:00)

ペインコントロールの実際
疼痛管理の新しい局面
日野原重明(ライフ・プランニング・センター理事長)今回の第4回ホスピス国際ワークショップには、みなさまにおなじみのHoy先生ご夫妻を英国からお迎えしました。Andrew Hoy先生は、私たちもが何度か訪問をしたプリンセスアリスホスピスのメディカルディレクター、奥さんのWendyも一緒に働いておられましたが、現在はエプソンヘルスケアNHSトラストで仕事をしておられます。
そして、日本からは埼玉県立がんセンター総長の武田先生に参加していただきました。
Andrew 3年前に日本に来ましたときのお顔をあちこちに見ることができて懐かしく思います。今日は私から疼痛管理の新しい局面について、そしてWendyから疼痛の評価についてお話しいたします。
まずはじめに、癌患者にモルヒネを投与するモードについてです。おさらいのようになりますが、癌の常みにおけるモルヒネ投与については、WHOの3段階癌疼痛治療ラダーというのがあるのはみなさんご存じでしょう。この考え方は簡単で、痛みの度合いにマッチした薬め投与で、最初は非オピオイド系、次に弱オピオイド系、そして強力なオピオイドの使用という3段階で痛みの度合いに応じた薬の量を投与してその効果をバランスしていけば、痛みの少なくとも80%はきちんと管理できるということです。
ところが例外として、どうしても痛みが管理できない、あるいは管理が困難な患者さんはいるもので、それをどう扱うかという問題は後ほどお話しいたします。
資料として添付しましたが(略)、ヨーロッパの緩和医療協会のコンセンサスとしてはほとんどの癌の痛みにはモルヒネがもっとも優れているという結論で、経口で与えれば吸収もでき、体も許容できるという結論です。
第1段階からいきなり第3段階にいってしまう場合も多いのですが、わたしは第2段階をしばしば使います。それなりの効用があると思うからで、コデインのような弱オピオイドを住います。どなたか使っている方はおられますか。
−レペタン(一般名はブプレトルフィン)を使っています。シロップで使う場合にモルヒネのシロップは苦味があるので、わたしはレペタンのシロップをよく使います。
Andrew たとえばインドでは州によってはモルヒネがなかなか入手できないという事情があって、コデインをかなり使うということもあるようです。
日野原 コデインは以前はよく使いましたが、その後変わってきたのです。私はコデインを心筋梗塞に使いすぎて患者のGOTが高くなったことがあったので、肝臓はどうかという気持ちをいっも持っています。
Andrew 日本では経皮で投与するフェンタニルは使われていないと聞いていますがそうですか。
西立野研二(ピースハウス病院院長)。まだ使えませんが、まもなく使えるようになるでしょう。
Andrew アメリカでは長年にわたって経皮でのフェンタニル投与の経験があるのですが、それがかなり普及して、ヨーロッパでも使われていますし英国でも使われています3フェンダーニルは鎮痛剤としてIV投与でかなり長い間使われてきました。強力なオピオイドで標準的に使われているものです。皮膚を通して吸収されるということから、亜硝酸塩と同じような特徴をもっています。水と脂肪の溶解度がモルヒネと比べてずっと係数がよいのでフェンタニルパッチを皮膚に付けると何時間かにわたって皮膚がフェンタニルの貯留場のようになるのです。亜硝散塩とまったく同じです。なぜモルヒネを使えないのかという方がいますが、脂肪がモルヒネをなかなか吸収してくれないのです。フェンタニルのパッチサイズは各10,20,30,40?2というサイズがありますが、パッチには25,50,75,100マイクログラム/時間というように記述されています。フェンタニルのモルヒネに相当する量としては換算率がいろいろありますが、フェンタニルパッチを作っているメーカーが計算表を出していまして、パッチサイズをいくつにすれば1時間当たりの経口での薬の作用の確保ができるかわかるようになっています。

 

 

 

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